からだが選ぶ服・こころが選ぶ自分 -Part 2-

ジーンズ

前回にひきつづき、体型とファッションをテーマにしたおはなし。今回は、ファッションの歴史を既製服という、すでに作られた服に焦点をあててふりかえり、今日、服を選ぶ際にサイズ選びに頭を悩ませていることの発端を掘り起こしたいとおもいます。

欲しいと穿けるのあいだで

「この服が欲しい」と最新のスタイルを店頭で見つけて、いざ、試着してみたら、どのサイズもピンとこない。おもっていたようなシルエットにならない。という経験は誰にでもあることなのではないでしょうか。「いっそ自分のサイズでこの服を作ってくれたらいいのに」とすら、おもったことさえあるはずです。

流行りの店で、最新のファッションアイテムを探し、いくつかあるサイズの中から自分にあったサイズを買う。これはいいかえれば、限られたサイズの中から、自分のサイズに限りなく近いものを選ぶ、ということでもあるのです。

既製服というすでに作られた服を買う。現在では、当たり前すぎるこの習慣は、実はまだほんの数十年前にはじまった、いたって新しい習慣であり文化であるということがわかりました。

近代ファッションの歴史ー既製服のはじまり

産業革命以後、紡績技術が発達し衣服環境は大きく変化しはじめます。19世紀前半にミシンが発明され、その後いわゆる労働者の衣類、たとえば作業着や軍服から既製服がはじまったといわれています。

それまで衣服は、仕立屋がひとりひとりの体型を採寸し、手縫いで仕立てた、オーダーメイドによるものでした。また、流行服ともなれば、作りこまれたデザイン、選び抜かれた素材、品質や美しさを考慮すれば、技術も時間もかかる、上流階級の贅沢な文化でした。市民にとって、衣服は暮らしの必需品でありながらも、必要最低限の調達にとどめ、時には古着も利用し、大事に使用されていたようです。

19世紀も半ばになり、ミシンが普及してもなお、衣服の工業化はなかなか進みませんでした。というのも、「サイズが異なる」ということや、クオリティや美しさを考慮すると仕立ての方が良い、と考えられていたからです。また、仕立屋が自分たちの職を失うことを恐れてミシン工場ごと焼きおとす、という事件まで起きました。1920年にはいり、ようやく流行服としてのファッションの既製服化がはじまります。

その要因のひとつは、、ファッションのシンプル化です。そう、これこそあの、ココ・シャネルによる偉業です。それまではファッションといえば、贅沢に装飾され、デザインが幾重にも施され、手のこんだたものばかり。既製服化することが難しい、複雑なものだったのです。しかし、ココ・シャネルなどのデザイナーの登場により、だれでもまねのできるシンプルなデザインが生まれ、既製服の普及に大いに貢献しました。

そして、既製服化がすすんだもうひとつの大きな要因。それが、、サイズの標準化です。当時のアパレルメーカーが主導となり、人々のからだのデータを収集し、体型サイズの分類化をしました。今では当たり前の、S・M・Lという衣服サイズの概念がうまれたのです。

既製服と経済発展

ファッションの既製服化が進むということは、大量に作り、大量に売らなければならない、という資本主義社会のはじまりでもあります。製品の機能以外の魅力をアピールすると同時に、デザインやスタイルのファッション化、流行を提案する、という販促方法を、ファッション業界の先導により、その他の産業も取り入れるようになりました。既製服文化の発展は、経済文化の発展でもあったのです。

そして、日本で既製服の一般化がすすんだのは、戦後しばらくたった、1960年代になってからです。いまから、たったの、60年余前のこと。高度経済成長とともに、既製服も普及したのです。昨今のIT文化のめまぐるしいまでの進化と発展を知る、現代のわたしたちにとっては、60年という年月が長いのか短いのか、ふとするとわからなくなりますが、少なくとも、顔がなんとなく浮かんだり、はなしに聞く二~三世代前までは、みな、自分で服を作ったり、仕立屋で注文していた、ということなのです。これはいいかえれば、それまでは自分の体型にあった服を誰もが着ていた、ということでもあり、いまのように、自分にあったサイズ選びに、頭を悩ませるということが、それほどなかったのではないか、ということです。

既製服の普及とともに、最新の流行を魅力的にとりあげ、人々の消費行動に作用させる、ファッション雑誌などが次々と発刊、発行されるようになりました。それとともに、人々のファッションに対する関心や興味は、ファッション市場の拡大と比例して、膨れていきます。

次回、ひきつづき、体型とファッションについて。既製服文化の発展や、ファッション雑誌などのファッション情報が人々に与えている影響について。そして、既製服のあり方に関する今後への期待などを、おはなししたいとおもっています。

外部参考リンク:

"https://history.fashion-press.net/consumptionsociety.htm(消費社会とファッションbyファッションプレス)":https://history.fashion-press.net/consumptionsociety.htm

"https://www.kci.or.jp/research/dresstudy/pdf/A_D64_KITAYAMA_Clothing%20Distribution_JPN.pdf(既製服普及以前の衣料品流通の光景_京都服飾文化研究財団byProf.Kitayama)":https://www.kci.or.jp/research/dresstudy/pdf/A_D64_KITAYAMA_Clothing%20Distribution_JPN.pdf

"https://www.cinematoday.jp/page/A0005528(ココシャネルbyシネマトゥデイ)":https://www.cinematoday.jp/page/A0005528

"https://wezz-y.com/archives/49168(洋裁文化と日本のファッション/井上雅人byWizzy)":https://wezz-y.com/archives/49168

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